FPAA とは何か

一口で表現すると、自分の好きなアナログ回路を自分だけの IC に変身させるICと言うこ とになります。

この石は、これ自体では何の動作もしません。 使う人の意思が有って、初めて回路として動作するようになります。

例えば、SSB のジェネレーターを作る場合、オーディオはこういうオペアンプを使おう、 PSN で I と Q の信号を作り出すのに、

こんな常数でこんな周波数構成でオペアンプが 8 個 とか、設計します。 いや、俺はフィルター方式でやる、と仰る方は、

バランスドモジュレーターとフィルター に何を使うか、と言う楽しい空想時間を費やします。 しかし、出来上がった基板と膨大な部品、

必ずしもその性能に満足するとは限らない。 あの回路はこうしておけば良かった、この部品は、あれの方が良かったのではないか?

などなど、結局その基板はジャンクとなる。こんな経験は私だけでは無いはず。 何とか、一枚の基板が、変身し、どのような回路にも

なるような、方法はないのか、と長 年考えておりました。今回、ご紹介する IC・・・FPAA これがそのICです。

デジタル回路では、FPGA という、どんなロジックでも、その規模にもよりますが、大抵 の規模なら 1 個の IC に全デジタル回路が収ま

ってしまうという便利なものがあります。アナログ回路でこれと同じ事をやろうという目的でトランジスタ規模で回路を作って繋げ

ていくという発想のものは有るということは聞いておりました。 調べてみると、その接続方法の煩雑さ、C と R が絡むと専用のツールが

必要で、とても私 の手に負えないと諦めていました。昨年、ひょんな事から、ANADIGM という会社の製品で、膨大な量のオペアンプと

スイッ チ、それとコンデンサの塊のような IC でほとんどのアナログ回路、例えばアナログ信号の アンプや加算機、乗算器、発信器、各種

フィルタなどを作っておき、これらを自由に繋げ れば大抵の回路は出来てしまうというものに出会いました。 回路を作るツールも無料で

サポートされます。例えばアンプ、これ一つで直流から 1Mhz 位までゲインは最大 40dB までどんなゲインの ものも設定できます。

マイクアンプなど一個ではゲインが足らない場合直列に2個繋げれば 80dB 迄上がります。ゲイン調整をしたければ、電圧によって

ゲインの変わるアンプも有りますので自由自在です。200Hz から 3Khz 迄の SSB 用のオーディオが欲しいなら、いとも簡単に

バンドパスフィルターが入ります。コンピュータの画面上で素子を選び、マウスで線を端子同士結ぶだけですのでどなたにで も出来ます。

出来た回路はシュミレーションして動くことを確認したらコンフィギュアというモードで データ化し ROM に焼けば実回路で動くと云う

わけです。まず、ANADIGM のホームページに行き、デザイナー2というソフトをダウンロードして 下さい。名前とメールアドレスを

入れればどなたでもフリーで入手できます。 此のソフトを走らせて、あちこちの窓を開いてみれば使い方はすぐ分かります。

くどくどと私が説明するよりその方が早い、ものの20分も有ればツールは理解できます。 IC が無くとも、実際の回路が無くても、

簡単さと、素子の興味ある動きがシュミレーショ ンで体験できるでしょう。実際動く回路は、それから考えてもいいと思います。

IC は何処で買えるのか・・・値段はいくらか・・・ANADIGM のホームページにオンラインの購入サイトが有り此処から何個でもたとえ

1個でも買えます。確か、2000 円位だったと思います。個数が増えるたびに値段が下がり、現在、私は 850 円くらいで買えるように

なりました。友達を誘って数を纏めれば、安く買えると思います。今回は、第一回目、これから、自作 SSB ジェネレーターで

メーカー製に負けない品質の ボードを目指していきます。

DE JA1BRS


さて、SSBを発生させるのに、PSNでやるのか、フィルターでやるのか、と言う議論が有ります。PSN派の言い分は、フィルター方式

では低音域を出そうとすると、フィルターのスカー ト特性のため、逆サイドの漏れが非道くなるので、フィルター方式は低音が出ない、

と言う物です。PSN方式には、それが無く、ふくよかな低音が出る、と言うのがその言い分です。 果たしてそうでしょうか?

PSNは低音が出る、というのは正解です。 ただし、ダンピングファクターは周波数が下がるにつれ悪化し、まるで風呂場で歌を歌っ て

いるような感じになっていきます。これは、100Hzから3000Hz、つまり 30 倍もの周波数処理を同一の回路で行わざるを得ない

マイナス点です。では、フィルター方式で逆サイドが漏れないことを前提に、どのくらいの低音が出るので しょうか?

これは、フィルターのスカート特性の切れ具合によって決まってしまいます。 例えば、キャリアポイントから100Hzでは、殆ど減衰

なし、100Hz 離れたキャリ アポイントでは、-40dB 等と言う、メカフィル、クリスタルフィルターなど有れば問 題ない世界です。

そこで、フィルターについて考えてみます。 バンドパスフィルターは単一共振器の集合体です、この個々の共振のシャープ差がシェー プ

ファクターを決定します。 結論を言えば、フィルターの周波数が高ければ高いほど、その特性は悪くなります。 では、6~10Khzで

フィルターを作ったらどうなるでしょう。 例え6Khzのバンドパスフィルターとしても、此処を通る周波数は6.1Khzから9Khzとなり、

その周波数比は1.475とPSN 方式にくらべ格段に下がり、低域のダン ピング劣化には改善されると思います。FPAAで用意されている、

フィルターはローパス、ハイパス、オールパスの用途に使え るオクターブ6dBのパッシブフィルタとこれを2段重ねたオクターブ12dB

のフィル ター素子が用意されています。 この、素子ではオールパスの能力は有りませんが、代わりにTノッチの回路が追加されていま

す。 おまけに、Tノッチの落とし込む周波数を境としてその周波数より高い部分、ANADIGMでは、この部分をハイフリケンシーゲイン

と呼びその部分を上げたり下げたり出来ま す。Tノッチの落とし込む周波数より低い周波数をDCゲインと呼びこれも自由にゲイン

を調 整できます、勿論、Tノッチの周波数、落とし込む量も自在に変えられます。ハイフリケンシーゲインを12dB、DCゲインを

-12dBとなると、1 段で24dBのフィルターが出来る筈です。 これを、周波数関係をずらしながら、重ねていくと、立派なバンドパス

フィルターが出来 上がります。 そんな面倒くさい事をやっていられないって・・・そうでしょう、私も同感です。 ANADIGMのソフトに

は、フィルターツールがついてきて、バンド幅、希望のフィル ター中心周波数、バンド幅外減衰度などを入力すればアッという間にそれな

りの特性を持ったフィルターを自動で作ってくれますが、完璧とは行きません。そこで、手入力で、細かく気に入るまで数値を弄る訳です

が、この辺の理屈を紹介するた め、くどくどとご説明をしました。10Khz程度のフィルターで有れば、100Hz程度の低音は完璧に再生

でき、しかも 逆サイドの50Hzは-40dB以下というフィルターは簡単に出来ると言うことが分か りました。

以下次号

DE JA1BRS


ANADIGM Designer2:ここでダウンロード出来る

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