ジ・アニメネタ -赤毛のアン-

 

以前に世界名作劇場の話で「ペリーヌ物語」と「私のあしながおじさん」についてお話したことがありますが。

今回はその続きで「赤毛のアン」についてお話します。

名づけて「ジ・アニメネタ −赤毛のアン−」と行きますか。(^_^)v

この作品はカナダの女流作家ルーシー・モード・モンゴメリーによって書かれた小説「Anne of Green Gables」が原作になっているものです。
監督(演出)は「アルプスの少女ハイジ」「じゃりん子チエ」の他、スタジオジブリ作品で「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」「おもいでぽろぽろ」などを手がけた、通称・パクさんこと高畑勲。

キャラクターデザインはやはりスタジオジブリで制作された「魔女の宅急便」で原画・作画監督をやり、「耳をすませば」では監督までこなしながら1998年に47歳の若さで他界した近藤喜文。

それに場面設定として、あの宮崎駿も途中までですが参加しているという、今で考えれば非常に贅沢な「作品」です。

放映されたのは1979年1月7日〜12月30日の一年間。全50話で構成されています。

舞台は19世紀初めのころ、カナダ大西洋側にあるプリンスエドワード島です。物語は1826年6月、赤毛の髪をお下げにした一人の女の子が、この島にやってきたことから始まります。
名前はアン・シャーリー。年齢11歳。彼女は隣の州であるノバスコシアの孤児院からやってきました。

まだ幼いころに両親を失い、あちこちとたらいまわしにされた挙句に孤児院へ入った彼女は、プリンスエドワード島エィボンリー村のグリーンゲイブルズ(緑の切妻屋根)に住むカスバート兄妹に引き取られることになったのです。彼女はまだ見ぬグリーンゲイブルズに思いを馳せ、期待に胸を膨らませるのでした。

プリンスエドワード島の州都・シャーロットタウンから汽車で揺られてたどり着いたブライトリバーの駅で彼女は、初めてカスバート兄妹の兄・マシューと出会います。ところがマシューはその女の子を見て驚きます。実は、カスバート兄妹が引き取ることになっていたのは男の子だったのです。ノバスコシアの孤児院から子供をつれてきてくれたスペンサー夫人が間違えたのでした。でも、心優しいマシューはアン・シャーリーをグリーンゲイブルズにつれて帰ります。その道すがらマシューは、おしゃべりで夢見がちな明るいこの少女をすっかり気に入ってしまいます。

グリーンゲイブルズでは妹のマリラ・カスバートが兄の帰宅を待っていました。ところが、帰宅した兄が連れてきた、赤毛のやせっぽちでそばかすだらけの少女を見て驚きます。間違いで連れてこられたことを知るアンはがっかりしておお泣きしますが、マリラはとりあえず一晩、哀れなこの子をこのグリーンゲイブルズに泊めてやることにします。そして翌日、隣町のホワイトサンドに住むスペンサー夫人を訪ね、アンを孤児院に帰すことが出来るかどうか相談しますが…。

老いた兄妹がひょんな事で引き取ることとなった、ちょっと変わった女の子アン・シャーリーが、エィボンリー村グリーンゲイブルズを舞台に様々なドラマを見せてくれます。

この物語の魅力は、グリーンゲイブルズに住むカスバート兄妹と主人公アン・シャーリーが、彼女らを取り巻くエィボンリー村の人たちとの間に起こす様々な事件と心の交流が実に上手く描かれているところです。

アンはその夢見がちな性格から様々な失敗を引き起こします。カスバート兄妹はそんなアンに振りまわらされつつも次第にアンを気に入り、気がつくと二人ともアンによって、それまで失われていた大切なものを取り戻していきます。その過程が実に感動的なんです。

それからこの作品のいいところは、原作のよさを実に上手く受けついているところですね。

この作品を鑑賞した後、私は原作を購入し読んでみました。すると、ストーリーはほぼ忠実にアニメ化されていることに気づきました。展開もほぼ同じ。ですから、原作を読んで「アン」の世界に触れた方でも鑑賞に耐えうると思います。

それはさながら「アルプスの少女ハイジ」以上の出来映えかもしれません。

「アルプスの少女ハイジ」はエピソードの少なさから前半の山小屋時代にオリジナルなストーリーを組み込んでいましたが、「赤毛のアン」の場合はエピソードが多数あるのでオリジナルなストーリーはほとんどありません。逆に「削除」された部分(お化けの森のエピソード)があるくらいです。しかし、それによって作品世界が影響を受けてはおらず、逆にオリジナルなエピソードさえ、本来の原作にあるのではないかと勘違いしてしまうほど上手に作られています。

ほぼ原作に忠実に。しかも子供から大人まで楽しめる「アニメ映画」として実にうってつけの一品です。ぜひ、一度鑑賞してみていただきたい作品です。

特に最後のあたりはカスバート兄妹とアンの間に、いつの間にか家族としての絆が作られていたことが分かるようになり、実に感動の嵐となります。誰でもラスト数話には泣かされるでしょう。大きな幸せとちょっぴりな不幸が、見ている人の涙腺を刺激します。

もっと詳しく、語りたいことは山ほど有りますが、これから鑑賞される人のためにあえてこれ以上は申し上げますまい。とにかく「必見」のアニメです。

出来ればこのアニメを見て、遠きカナダの地にあるプリンスエドワード島に思いを馳せてください。

ちなみに余談になりますが…。

カナダ連邦プリンスエドワード島には、エィボンリー村のモデルになったキャベンディッシュという村が実在します。そこには国立公園がありまして、その公園内に実際に「グリーンゲイブルズ・ハウス」が実在します。

プリンスエドワード島キャベンディッシュ村にあるグリーンゲイブルズ・ハウス



もともとは原作者ルーシー・モード・モンゴメリー女史が育った祖父母の家が「グリーンゲイブルズ」でありまして、いま、そこは彼女の代表作である「Anne of Green Gables」の博物館となっているのです。

広大な農場の真ん中に母屋があり、それが「グリーンゲイブルズ」です。そこにはアンの部屋やマシュー・カスバートの部屋、マリラ・カスバートの部屋などがありまして、まさに「赤毛のアン」の作品世界が現実に現出しているそうです。

そして、金とヒマに余裕のある方。アンがとても気に入って、お金に糸目をつけないと言う方が居りましたら、ぜひともプリンスエドワード島キャベンディッシュ村のグリーンゲイブルズを訪れてみることをオススメします。

彼の島を訪れる観光客の中には、かなりの割合で日本人が多いとの情報も有ります。そのうちの何割かはこの「アニメ」を見てプリンスエドワード島を知り、グリーンゲイブルズを一目見ようと訪れているのかもしれません。

私もいつかは行ってみたいと思います。(^_-)-☆


舞雨 寛
(2005年4月20日発表)


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