うる星やつらは見てましたか?

 

「うる星やつら」も私はアニメから入りましたな。

でも、原作者の高橋留美子は知ってました。というのも学生時代・アルバイトをすることによってようやく、コミック雑誌を買い読みすることが出来、少年ジャンプ、少年マガジン、少年サンデーなどを読み漁りましたので。

高橋留美子は「勝手なやつら」でメジャーデビューした「小池一夫まんが塾」のメンバーですよね。あの「勝手なやつら」は確かに面白かった。でも、「うる星やつら」はあんまり見る気がしなかったのでね。

ところが就職してからのち、「うる星やつら」がTVアニメ化されると聞いて初めて見る気になり、ちょうど発売したての「ビデオデッキ」を購入した時期と重なって、留守録で番組を見れるようになってから見始めたんです。

つまり、生まれて初めてビデオデッキで録画した番組が実は「うる星やつら」の第一話だったんです。実に記念すべき番組だったんですよ。
それから「ハマ」りましたね。(^_^)v

原作も総て読み漁ったし、自分でもセル画を描くことにチャレンジしました。当然「ラムちゃん」を描きたかったんですがね。ちょうど弟が「アニメーター」を目指していた時期とも重なりました。でも、やっぱり「絵」は駄目でした。弟の方がはるかに上手い!

アニメの制作は「スタジオ ぴえろ」。絵柄の上手さには定評があったプロダクションです。今もクオリティの高い絵を描くとの定評を得ています。

「うる星やつら」は「スタジオぴえろ」が大きく発展できた記念すべき作品でしょうね。実はこの作品。当時のテレビアニメでは画期的なことをやった「初めての作品」でもありました。

たとえば「テーマソング」にポップ調の曲を用いたこと。「ラムのラブソング」は当時大ヒットし、当時のレコード業界に「アニメのテーマソングは売れる」ということを結果的に証明して見せたことになりました。なにしろ、それまでのアニメのテーマソングは「主人公賛歌」のものが主流でした。だから、曲だってアニメはアニメ専門の作曲家に依頼するのが普通でした。

フォークやニューミュージック、今で言うJ-POPのシンガーに依頼することはまれだったんです。「うる星やつら」からですよ。ニューミュージックのシンガーに「オープニング」や「エンディング」を依頼するようになったのは。

それからもう一つ画期的なこと。それは、曲にあわせてキャラクターが踊るといったシーンをオープニングやエンディングに使うようになったのも、実は「うる星やつら」からなんです。

TVアニメの「うる星やつら」で最初のエンディングテーマは「宇宙は大変だ!」というものでしたが、そのエンディングのシーンでラムちゃんが曲にあわせて踊るシーンがあります。ちゃんと曲とのテンポがあっていて、まるでラムちゃんがエンディングにあわせて踊っているように見えます。

実はこれ、意外なことですが「偶然の賜物」だったわけです。

そのときのうる星やつらのオープニングとエンディングアニメーションを描いていたのは「南家こうじ」というアニメーターです。
参考→http://homepage1.nifty.com/~dodo/blueback/nanke/

彼がたまたま描いたエンディングシーンと音楽のタイミングが「奇跡的」に同調したと言うのが本当なんですが、当時のアニメファンは可愛いラムちゃんが曲にあわせて踊る姿に「狂喜乱舞」したのですな。私もその一人でしたが。

早速話題になってそれから、うる星やつらのオープニングやエンディングは必ず「曲」と同調し、キャラクターが踊るように作り上げるようになった。それが次第に他のアニメにも採用されるようにらなったわけです。

いまは「当たり前」の技術ですがその当時は、非常に苦労して同調させたようです。


そして「うる星やつら」と言えば、二人の監督(演出家)を忘れてはならないでしょう。それは押井守氏とやまざきかずお氏です。アニメ・うる星やつらのほとんどは、この二人によって作られたものです。

テレビシリーズでは前半第1話〜129話は押井守氏がチーフディレクター(今で言うなら総監督)で、其れ以降がやまざきかずお氏なんです。二人とも今では有名な「演出家」で特に押井守氏は世界でも有名な映画監督にまでなってしまいました。

最近ヒットした映画に「マトリックス」と言うのがあります。 アンディ・ウォシャウスキー(Andy Wachowski)、ラリー・ウォシャウスキー(Larry Wachowski)兄弟が監督として作られたヒット作ですが、彼ら兄弟が映画「マトリックス」のイメージをどこで受けたかと言うと、押井守氏の代表作の一つであるGHOST IN THE SHELL〜攻殻機動隊〜(原作・士郎正宗)というアニメ映画からだとか。

かの兄弟はアジア、特に日本に興味を持ち、日本のアニメも良く見ていたようです。その中で押井守氏の作品に触れて衝撃を受けたといいます。そして、ネットワークを基調とした未来のサイバー警察を描いた「GHOST IN THE SHELL〜攻殻機動隊〜」で、機械に完全支配された未来都市のイメージを受け、急いで作り上げたのが「マトリックス」第一作の脚本だと言う話です。

その押井守氏がメジャーになったのはまさに「うる星やつら」であり、中でも劇場版として作られた「うる星やつら オンリーユー」と「うる星やつら ビューティフルドリーマー」は高い評価をうけました。

特筆すべきは「ビューティフルドリーマー」ではないでしょうかね。不思議な時間をテーマとして、「うる星やつら」の作品世界を再構成して見せた力ワザは見事です。かの映画では「うる星やつら」はラムが見ている「夢」なんだということ。それも、学園祭開催を明日に控えた「前夜」の眠りでみる「夢」なんだと。

だからいつも「ラムとあたるの鬼ごっこ」が無限につづくのだ。そういう解釈なんですな。それは、やがて高橋留美子による原作の最終回にも通じるものがあるような気がします。

私は「ビューティフルドリーマー」で「うる星やつら」は一つの「完成」をみたのではないかと思っているくらいです。結局「うる星やつら」は「雑物」「混ざり物」を取り除いて純粋に持っていくと「ラムとあたるの鬼ごっこ」に行き着くんですよ。原作やアニメの全エピソードをたずねてもかならずどこかで「ラムとあたるの鬼ごっこ」が語られるんです。

私はそう感じてしまったので、うる星やつらのアニメ作品は「ビューティフル・ドリーマー」以降見なくなってしまいました。劇場作品もその後もやまざきかずお氏などによって4作品製作されましたが、私は見ていません。

考えてみるとその後の劇場版作品はどれも「ラムとあたるの鬼ごっこ」から抜けきれていません。結局押井監督は「ビューティフルドリーマー」で「うる星やつら」の決定版を見せつけてしまった。だから、其れを見せられた私はどうしても、それ以降の作品について2番煎じ、あるいは柳の下の2匹目のドジョウを見せ付けられているようでつまらなくなってしまったと言うか、面白さを感じなくなってしまったと言うのが正直な気持ですね。
確かにラムちゃんは可愛いキャラですが、私は「美少女キャラ」だけを見せ付けられる作品は好きでは有りません。やっぱり、物語はドラマティックであるべきだし、重要なのはストーリー展開だと思っているのでね。

考えてみるとTVアニメも似たようなものです。押井さんがチーフディレクターを降板するとアニメ制作会社も変わってしまいました。
其れまでは「スタジオぴえろ」が携わっていましたが、それから後は「スタジオ ディーン」が制作することになります。
ま、長寿番組にはありがちなことですけれど、制作会社がかわると若干「絵柄」とか「ストーリー展開」が変わり、映画としての「味」なる部分がかわってしまうことはよくあります。
「うる星やつら」も確かに変わりました。

まず「ラムちゃん」がグラマーになってしまった。胸の張り具合が大きめになって「少女」というイメージからはちょっと遠くなったこと。
演出がおとなしくなり、ドタバタシーンが緩慢になってしまったこと。

なによりも、「押井守編」では良くみられた「お遊び」のシーンが見れなくなってしまったことですな。
「お遊び」のシーンと言うのは、その頃から良く見られた「ビデオ録画」している視聴者にだけ分かるシーン、たとえば「うる星やつら」の話なのに、その他雑キャラに「スタッフ」が書き込まれていたり、ウルトラマンやゼットンといった「他の番組のキャラ」が片隅に書き込まれていたりとか。そういうのってテレビだけで見ている視聴者には分からないじゃないですか。ビデオ録画している人ならば「あれ?」と思ったシーンを「一時停止」させ、コマ送りでみていくと、意外な人の顔に「いたずら書き」がしてあるのが分かったり、そのいたずら書きが実はスタッフからのメッセージだったり。
そういう「お遊び」のシーンを見つけるのも面白かったんですよ。押井さんは「劇場版」でもそういう「お遊び」のシーンを盛り込んでくれたんですが、やまざきかずお氏は「正直」過ぎてあんまり面白くなくなってしまった感がありましたね。

ともあれ、そういう「うる星やつら」ではありましたが、総じて考えるとやっぱり、テレビアニメとして一時代を作り上げたのは間違いありません。今振り返ってみても200話を越えるロングライフのテレビアニメ作品と言うのは、近頃トンとお目にかからなくなりましたね。最近ではどらえもん、ちびまるこちゃん、名探偵コナンぐらいではないでしょうか。もっとあるのかもしれませんが、近頃テレビアニメで「みたい!」と思うようなのがなかなか無くて、今じゃ見る気もしなくなっているのでそれ以外は分かりません。残念ながら(^◇^)

うる星やつらは最近、DVD-BOXで販売されていましたけど、やっぱりさすがに200話を超えますから価格も馬鹿になりません。ためらっているうちに売り切れになってしまい、それ以降増版して売っているのかどうかさえ分かりません。


またまた長い話になってしまった。

舞雨 寛
(2005年4月29日発表)


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