h13-10-20 追加

レーザー光線

(レーザーポインター)
                    小澤哲磨  横浜逓信病院名誉院長 

97年夏,レーザーポインターからと思われる赤い光によるプロスポーツの妨害事件があり報道されましたましたが, 最近, レーザーポインターは容易に入手出来て,子どもたちの間にも遊びとして普及している様です。これによる事故例が国民生活センターより平成12年11月6日に発表されました。また、日本臨床眼科学会(平成12年11月3日)では重篤な1症例が報告されました。関連の報告を下記紹介いたしますが、この光は太陽の100倍ほど明るく目に有害です。絶対に目に入れないようにと関連のある人にPRしてください。

レーザーポインターとレーザー安全基準     01-10-20

小澤哲磨 横浜逓信病院
要約
背景: 近年.玩具型のレーザーポインターが遊びの目的で格安の値段で小中学生間に普及したため,眼にたいする安全性が社会的に問題となってきた。
症例: レーザーポインター光を照射され網膜色素上皮に障害を認められた4症例(外国例)はいずれも10秒以上の露光時間であり,そのうち3例は若年者であった。重大な器質的眼障害は生じず,心因性反応のことが多いとの報告もある。照射により不快感を生じることが多く,作業中の状況によっては危険性を伴うと考えられた。頭痛,眼痛関連についても検討した。
工業用高出力レーザーでの眼障害事故は殆どが実験室内で一部点検中に生じている。 検討:玩具型のレーザーポインターは子供への対策が重要なことから出力がクラス1のもののみが販売許可されることになったが, 家庭内には広く普及しており, その危険性を今後とも啓蒙していく必要がある。高出力レーザーの実験,点検時には安全設備の充実が安全教育とともに望まれる。 (日本眼科学会雑誌105:653-658,2001) 関連文献は文献欄に記載する。

消費者被害注意情報 No.32 (2000/11/08) の抜粋
国民生活センター
「レーザーポインター」で遊んでいて目に障害!

子どもがレーザーポインターで遊んでいる時に、「レーザー光線に当たって障害を受けた」などの情報が、1997年から14件報告されている。このなかには「網膜がやけと状になり、1年後の現在も視野に後遺症が残っている」「目に当たり視力が低下した」などといった深刻な例もあつた。
そこで、消費者に注意を呼びかけるとともに、あわせて早急に安全対策を講じるよう関係機関に望むこととした。
3.主な事例
 @友だちのレーザーポインターの光線が息子の目に当たり、網膜がやけど状になり、1年後の現在も視野に後遺症が残った。(2000年12歳 男児)
A電車の中で同じ車両にいた小学生に、2歳と6歳の子どもが目を中心にレーザーポインターの光を当てられ、子どもの目が傷つけられた。医者にかかったところ大変危険であり、障害が残るかどうかは 2〜3年たたねばわからないとのこと。(2000年 2歳 女児)
 B 息子が同級生に、ゲームセンターで取ったレーザーポインターのレーザー光を目に当てられ視力が低下し頭痛が起きた。(2000年14歳 男子)
 C レーザーポインターの光線が目に当たり、めまいがした眼科で診察した結果、視力がかなり落ちていた。危険だ,(2000年15歳 男子)
 D 中学校教室内で生徒数人がレーザーの出るおもちやを振り回していて、光が他の生徒の目に当たり視力が低下した。おもちやはゲームセンターのクレーン型ゲーム機で生徒が取ったレーザーポインターで、パッケージには英文で注意書きがあるらしいが、子供には理解できない。危険性の知られていないおもちやを子供が容易に入手できるのは問題。(1999年13歳 女子)
E 息子の友人がレーザーポインター使用中に、小学生の息子の目に光線を当てた。息子は一瞬残像が残ったが、痛み等の異常はないと言う。2〜3cmの丸い形をした玩具で、本体に小さく「目などに当てないで下さい」と表示されている。玩具の自動販売機で子どもが購入した商品のようだ,(1999年)
 F 中学生の息子が友人のレーザーポインターで遊び、光線を照射したところ、別の室内にいた50歳代の女性に網戸を通して目に当たり、女性は目を痛め、視力が低下した。(1997年50歳代 女性)

 

レーザーポインター黄斑症

         岡野正(東京医大・霞ケ浦)溝口朝雄、菅野裕丈、松野員寿 落合順吉、尾掩雅博
   目的:laser pointer(LP)を直接照射し黄斑を障害して視力を低下させた例を、警鐘の意味も含め報告する。
症例:平成11年11月の授業中、生徒が約3mの距離から教師に向けLP を約1秒間執拗に照射した。症例は23歳の女教諭で、その時、右眼に赤い光を感じた。某眼科で事故前は両眼とも矯正視正視カは1.2あったが、事故2ケ月後には、右は0.05に低下していた。その後当院に紹介された。
   所見:事故後75日の初診時、右矯正視力は0.01と低く、中心暗点があり、黄斑に顕著な混濁と中心窩出血があった。蛍光造影で黄斑下の色素漏出が顕しく、OCTで黄斑網膜厚増加があり、ICG造影で脈絡膜新生血管由来と思われた黄斑下出血をみた。laser pointer maculopathyと診断した。
   経過:半年後、浮腫や出血は減り、OCTでの黄斑網膜厚も減少したが視力は0.2と低く中心暗点も残っていた。
   考案:LP(630〜670nm)の光量は、ICE基準でクラス3a以下(5mW以下)の規制だが、本件のは基準以上の疑いがある。  照射2ケ月後の悪化は黄斑下脈絡膜新生血管が関与した可能性があった。(ICG造影では不顕)
   結語:市販laser pointerでの黄斑照射で視力が極度の障害された例を示し、その危険性を強調したい。また、その市販を的  確に限定すべきことを訴えたい。

 

Laser Pointer Maculopathy

Ehud Zamir, MD, lgor Keiserman, MD, and ltay Chowers, MD, Am J Ophthalmol 127 (6) : 728-729, 1999
レーザーポインター照射によりにより網膜に器質的な傷害が確認された症例が米国で報告された。 10秒間見つめていた。 視力0.5. で 後に1.0 まで回復。

Laser pointers:not be taken lightly
Israeli,D. British Journal of Ophthalmol.845:555-556,2000
イスラエル。16才 男 両眼に交互に 20秒間 1mの距離よりレーザーポインターの光を照射された (670nm 5mW laser diode)。2日間 赤い中心暗点を自覚。3日目には視力,視野とも正常。しかし両眼とも中心小窩のすぐそばに螢光眼底撮影にて過螢光を示した。この状態は8ヶ月続いた。


レーザーポインター htm 視力低下事故が 横浜の中学生3人が被害
(神奈川新聞2000.01.22 掲載)

横浜市内の市立中学校で昨年十二月、会議などでスクリーンを指し示す「レーザーポインターの赤い光が生徒らの目に当たり、三人が一時的に視力が低下する事故があったことが二十一日、分かった。幸い、症状は軽<、三人の視力は既に回復しているという。しかし、横浜市消費生活総合センターは「今後も起こりうる事故」として事態を重視し、通産省など関係機関に対策を申し入れた。同省もこれを受け、警告表示の義務化など規制の検討を姶めた。
 事故の起きた学校関係者の話によると、男子生徒が校内でレーザーポインター(長さ七a)を振り回して遊んでいたところ、周囲にいた三人の生徒の目に光線が当たった。三人が目がかすむなどの症状を訴えたため、眼科医の治療を受けた。現在では視力は回復しているという。同校の校長は「症状が軽かったのが幸いだった。危険なものでは遊ばないよう、生徒に呼びかけた」と話している。
 知らせを受けた市消費生活総合センターでは、男子生徒がこの器具をゲームセンターの「UFOキャッチャー」と呼ばれるゲーム機の景品として簡単に入手したこと、パッケージに日本文での警告表示がないことを重視している。
 国内製品には「ビーム(光線)をのぞきこまないこと」などの表示があるが、今回のものは輸入製品だったこともあり、日本文での警告表示は全くなかった。 そこで、同総合センターが通産省の外郭団体・製品評価技術センターに事故を報告し、同時に規制の必要性を訴えた。さらに、ゲームセンターの業界団体に対しても、この種の器具を景品としておかないよう申し入れた。通産省の担当者も事態を真剣に受け止め、対策の必要を示した。米国では規制している州もあるという。
市消費生活総合センターによると、レーザー光線を扱う製品は光量によってランク分けされており、通常、市販品では眼障害は起こりにくいという。しかし、故意に数十秒間凝視した結果、眼球に障害が生じたという報告もある。日本工業規格(JIS)で安全基準が定められているが、法的拘束力はな<、企業の自主管理にゆだねられているのが実情だ。
 レーザーポインターは、会議などでスクリーンを指し示す文具で、数千円で販売されている。一九九七年、プロ野球の試合中に何者かが観客席から投手を狙って発光し、試合が中断した事件があった。また、競馬のレース中に競走馬を狙った事件も報告されている。

                


to menu