神経眼科,レーザー眼科,レーザー安全基準,眼科ME 生体材料 に関連した学会,文献,話題等を紹介。
12-01-01 神経眼科 2011年28巻 第二号紹介
日本眼科学会総会2011年5月12-15日報告
学会案内 学会報告等
10-04-20更新 (日本眼科学会追加)
文献(LITERATURE)
追加 10-01-12 レーザー障害
特別パネルディスカッション『大規模災害で我々に何ができるか?〜東日本大震災と眼科医療〜』
について
__「岩手被災地での眼科診療」(岩手医科大学), 「院内復旧と連携強化,後方支援」(東北大学),
「原子力発電所事故への対応」
(福島県立医科大学),「被災地医療を支える大学病院山下英俊氏(山形大学),
「日本眼科学会の対応と対策」(神戸大学)_指名討論:小沢忠彦氏(小沢眼科内科病院)・
坪田一男氏(慶応義塾大学)
ー
近隣の拠点病院眼科からの被災地への支援、近隣病院へのバックアップー、これにはさらに二重、三重の後方支援が必要であった。国際てきにも眼科検診車空輸援助や眼科医師と検診設備の援助など、被災地が広範なため、支援体制が大規模で複雑なものとなったが、何より重要なことは、刻々変わる状況の変化の的確な情報伝達と連携であったとのことである。
阪神の地震災害の経験を加えて、的確な支援活動を眼科では行うことができたと考えられる。
神経眼科 2011年28巻 第一号紹介
神経眼科疾患の遺伝学的進展
山本\子
1993年に国際的共同研究の結果,常染色
体優性遺伝疾患であるパンチントン病の変異
遺伝子が明らかにされて以来1),遺伝疾患の
病因遺伝子の解明が行われ,多くの疾患で究
明されつつある.
神経眼科領域では異常眼球運動を示す数多
くの神経変性疾患,視機能異常を来す網膜色
素変性症やミトコンドリア病などの遺伝的検
索が行われ,診断が確実になり,遺伝子異
常と表現型との関連が明らかになり,さらに
治療への試みなどに期待が寄せられている.
脊髄小脳失調症とミトコンドリア病について
述べられている。
脊髄小脳失調症は優性遺伝の5型、劣性遺伝の2型
につき、ミトコンドリア病はCPEO、
MELAS、視神経萎縮につき神経眼科的特徴などを
詳述されている(表1、2)。
ハンチントン病の遺伝子解明がなされて,
その後,他の遺伝性疾患で遺伝子解明が一気
に進展したのと同様, 1つの遺伝疾患で遺伝
子治療を成功させて一気に突破口を開くため
地道な努力がなされている.
学会印象記
第18回国際神経眼科学会(Lyon),第11回国際斜視学会(Istanbul)
大庭紀雄
平成22年は6月にLyon開催の,第18回国際神縫眼科学会INOS2010, 9
月にIstanbul開催の第11回国際斜視学会に出席した LyonとIstanbulではそれぞれClaude Bernard, Behcetゆかりの大学病院や博物館を訪ね関係史料をいくらか集める機会があった。
国際神経眼科学会
1) Devic neuromyelitis optica (DNMO)
抗AQP4抗体はDNMOに特異的とはいえない
かもしれない。また,脳背髄液のglialfibrillin
acidic protein (GFAP)は急性期DNMOにおい
ては多発性硬化症その他の神経疾患のそれの数
千倍にも増量する,病巣のサイズや神経機能不
全と相関する,緩解期には正常化するといった
最近の知見が検証追認されていた。脳脊髄液
GFAPは急性期DNMOの診断マーカーとして
も活用できるだろう。
2) ADOA
遺伝性視神経症のセッションでは,
優性遺伝性視神経萎縮, ADOAの諸問題
が熱心に討議された. 2000年に同定された遺
伝子OPAl (3q28-3q29)は,まもなくADOAの
原因遺伝子であることが判明して分子病理学的
理解が進むとともに,昨今は遺伝子型と表現
型との相関問題やmultisystem diseaseとしての病態が検
討されている.
INOS2010におい
ても,こうした徴候に加えてADOAplus が複数の施設から報告された。 mtDNA
の欠失をみるCPEOに関連した``ophthalmo-
plegiaplus"を想起させる所見である.また,
ADOAの病因にはミトコンドリアの機能不全が
かかわることが指摘された..
国際斜視学会
,神経眼科と境界を接する先天眼球
運動異常や麻痺性斜視について掘り下げた討論
が行われた.こうした課題では臨床実践としての手術療法を検討した
演題が圧倒的多数を占めた. CCDDや上斜筋
麻痔の眼位矯正に手を替え品を替えて外眼筋の
transpositionを工夫していた.このあたりは,
鑑別診断や病態生理の検討に意を注ぐ神経眼科
学会と対照的の感じである.
第24回甲状腺眼症研究会の報告(経団連会館 平成23年4月9日(土)
震災後まもなくで、足の便もわるく心配されましたが、多数の方が参加され、盛会でした。
甲状腺眼症のステロイド治療 井上立州
ステロイドパルス治療の成績、パルス治療と大量漸減治療と球後注射
を併用した治療の比較について報告された.
両者に明確な差異はないようである。
バセドゥ病とバセドゥ病眼症の発症機序
和歌山県立医科大学 内分泌代謝内科教授赤水尚史
甲状腺分野において現在最も重要な臨床課題の一つが、悪性甲状腺眼症の
治療であり、より良い治療法の開発が望まれています。新たな治療法の開
発には、発症機序の解明が極めて重要ですが、非常に難渋しているのが現
状と思いますO それでも近年、複数のグループによって発症機序に関する
研究が進み、新たな展開が出てきています(図2)。バセドゥ病眼症の本態
は自己免疫異常ですが、従来考えられていたTSH受容体以外にも新たな自
己抗原が提唱されています。また、外眼筋腫大や眼寓脂肪組織増生の機序
は繊維芽細胞の活性化とグルコサミングルカン産生にありますが、その病
態に関して研究が進展しています。
新しい治療法の可能性が出てきました。
JIS C 6802「レーザ製品の安全基準」の改正が平成23年3月22日に官報公示されました。
この規格は, 2007年に第2版として発行されたIEC60825-1を基に,技術的内容及び対応国際規格の構成を変更することなく作成した日本工業規格です。
医用レーザーもこの規格が適用されます。
レーザーポインターによる眼障害3例
レーザーポインターの安全性確保のため販売規制が行われてから日本では
障害例は報告されていなかったが、2010年、久しぶりに中学生が
学校内で障害された1例があつた.
加害者は、同級の13歳の中学生で、最近、教室内で起きた事件である。
上海勤務の父親の元に遊びに行き、父親からレーザーポインタを貰った。
父親は、夜店で買ったとのこと。
レーザーポインターは波長532 nmの( YAGレ-ザのSHG)グリ-ンレーザで、
その出力は50mW。被害者は13歳男子。左眼眼前10cmにて約1秒間照射された。
視力の低下は無かったが暗点が認められた。網膜断層写真にて網膜の中心窩より
ややはずれた場所に120μ径の障害を認めた。(現在投稿中 昭和大学眼科 Dr植田俊彦私信)
上海万博会場の周辺では容易に高出力のレーザーポインタが入手できた様である。
50mwと極めて高出力であり、一瞬でも目にはいると 網膜障害を生じてしまう。しかし
見かけの形状は安全なレーザーポインタと変わらない。
英国では2例報告されている。レーザーの出力はさらに大きく150mwである。1名は
自傷事故で両眼受傷した。反射光によると思はれる。視力は右眼0.4左眼は指数弁であつた。幸いなことに最終的
には右0.6 左0.8まで回復している。著者は形状が安全なレーザーポインタと変わらな
いので危険性が大きいと指摘している。(Stefan Wyrsch MD 他、The New England Jounral of Medicine
1089-1091,2010)
もう1例は出力の記載はないが両眼の視力が0.5まで低下している
(Kimia Ziahosseini 他、BMJ 340:1261,2010) 。
これらのレーザーポインタは安全なものの100倍も強力なもので、おもはぬ所からの
反射光で他人だけでなく 自分にも障害を生じうる。 素人にはとても使用できない危険
なものである。
もし手元に安全性の確認されていない外国製のレーザーポインタがあれば
直ちに破棄されることをおすすめする。
YAGレーザーによる網膜障害の1例
保護眼鏡(透過率10-5)を装用していたにも関わらず、網膜損傷を生じた。
YAGレーザー50mJ の反射光を
1秒間見つめた。視力は1.2であったが左眼中心窩に白斑、OCT所見より視細胞障害が考えられた。
事故の原因が保護眼鏡の透過率か眼鏡の構造かは抄録からは不明であるが、保護眼鏡をかけていて眼障害
を起こしたのは世界で初めての症例と考えられる。(佐藤達彦他 昭和大学眼科
日本職業災害医学会2010)
甲状腺眼症は難解な疾患である。井上洋一氏等の先達が全体像の把握に努めてこられたが
最近は若手研究者も増え、不可解な、得体の知れないこの疾患の病態がより明確化
してきている、 本会のシンポジゥムではエネルギッシュな検索を続けられている柿崎裕彦氏(愛知医大眼科)が
外科的治療を,
安積 淳氏(神戸海星病院)が内科的治療を講演された。安積氏の抄録の一部を掲載した。
「バセドゥ病眼症に対する非観血的治療」 安積 淳 神戸海星病院眼科
眼窩組織に対する自己免疫疾患であるバセドゥ病眼症の経過は: 1)炎症性疾患として活
動性の高い時期から始まり、 2)未治療でも自己制限性に経過し0.5−3年で鎮静化するが、
3)鎮静期に眼窩容積増大、筋組織拘縮による後遺症を残す、とまとめることができる。従っ
て治療は、的確に炎症活動性を評価し、自己免疫反応による炎症を抑制して、鎮静期の後遺
症を最小限に食い止める。複視や眼球突出などの後遺症には外科的治療を行う。という方針
になる。
(中略)バセドゥ病眼症の程度には軽重があり、ステロイドの副作用を考えると、パルス療法の適
応には限界がある。一方、患者のQOL低下には、眼瞼腫脹や眼瞼後退といった前部眼窩組
織の軽症病変が大きなウエートを占めており、視機能に影響がなくても看過できない。昨今、
こうした軽症例に、トリアムシノロンアセト二ド40mgの局所注入を行ってきた 2008年
まで155例の治療効果解析では70%の症例で「軽症〜症状なし」まで改善したが、 14%で
再発や治療効果不足、対眼発症、直筋群発症がみられた。(後略)
。