LITERATURE

laser, biomaterial and neuroophthalmology


レーザー事故例文献追加2010/01/12

書評    神経眼科  MOE   レーザー追加    交通事故    眼科誌のインパクト ファクター


書評

レーザ安全ガイドブック第4版 2006 光産業技術振興協会編 新技術コミュニケーションズ発行
 平成17年 JIS C 6802 「レ-ザ製品の安全基準」が改正された。今回の改正はクラス分けや 光化学反応の重視など主要、重要なところが変更されたので、それに関連する広い範囲の 改定が行われた。また平成18年 JIS C 6803 「レ-ザ製品の安全-光フアイバ通信システムの 安全」の制定があらたにされたので、レ-ザ安全ガイドブック第四版にこれも加え、 大巾な改訂版となった。レーザ取扱者はこのガイドブックを有効に 利用され、より安全なレーザ使用環境を作って頂きたい。
 

   神経眼科用語辞典  序文
 日本神経眼科学会は50年の歴史を重ねてきた。以前から,同学会では神経眼科学で使わ れる用語を蒐集し,用語の標準化をする必要性が指摘されていたoそれは,神経眼科学が眼 科学と神経科学の境界となる領域を扱っているため,その用語は,眼科医にとっても,ほか の神経科学の領域の方々にとっても,なじみがたいものが含まれているからである。そこ で,これを受けて2001年に同学会の用語委員会ができた。さらに,この機会に用語を蒐集 するだけでなく,用語辞典を作成しようという企画が進み,この作業にメジカルビュ一社が 全面的に協力して下さることになった。 (中略) 用語を標準化するにあたっては,日本語を中心とする か英語を中心とするかが議論となったが,和訳にこなれていないものが多数出現したため, English-Japanese Dictionaryを主体とするのが適切との結論に達した。しかし,索引 にはJapanese-Englishの形でも用いられる体裁をとり,また略語辞典も兼ねられる形 としたo また,本用語辞典を編むにあたり, lページ目から最終ページまで「読む辞典」と しても耐えうる良質の内容を目指し,図も豊富に取り入れた。(後略)  

藤野 貞著「神経眼科 臨床のために」(第2版 医学書院)は, 第1版の大好評を得て,改訂され,100ページ近く内容が増えてい たばかりでなく,各項目にもかなり手が加えられた. (中略)日本の神経眼科医の祖というべき著者が,敬遠されがち な神経眼科がいかに面白く,簡単かということを,身を持っ て示そうとした書であり,それは大いに成功していると思われる. 著者らしさというか,神経眼科を愛する心,神経眼科を学ぶ後進 を思う優しさが存分にあらわれている.  評者 若倉 雅登(済安堂井上眼科病院) (神眼18 : 475-477, 2001より一部紹介)

本書は、30年にわたって神経眼科ひとすじに研鑽を積んで こられた藤野博士によるものである.本書の初版から10年、 診断技術、病態理解が進んだ.評者には初版でも書評を書く 機会があったが、本書刊行の意図と目標は初版の書き出しに 明解である.『神経眼科は難しいという.本当でしょうか. 「山登り」と聞き、ロッククライミングを連想すると、 その技術の高度さに、自分とは無縁のものと思うでしょう. ....』 第2版の序はこうである.『神経系病変には、 しばしば眼の異変が現れる.問診と、眼の所見、患者の状態の 注意深い観察で、主病変が何処にあるか、何の異変か、 見当を付けられることが少なくない....しかし、傍ら 患者さんの望む、治療、対策、予防、カウンセリングなどに、 素早く対応できるように心掛けたい.』まず地図(解剖図) をそろえ、簡単な検査から診断への decision tree を作成し、 対象となる疾病をくまなく取り上げて要点を記載し、ポケットに 入るほどの診察器具を付録とする、といった神経眼科を身近にさ せてくれる工夫は心憎いほどである.眼科の研修医のみならず、 神経疾患に接する多くの方々が診察机にそなえておけば大いに 役立つにちがいない. 評者 大庭 紀雄 (「週間医学界新聞」 2002年5月より一部紹介)

なぜ  あれ が思い出せなくなるのか  記憶と脳の7つの謎 D L シャクタ−著 日経ビジネス人文庫695
  訳者あとがき    あなたのまわりに、こんな人はいないだろうか? 日常のさまざま な出来事を、起こるやいなや忘れてしまう人。 自分でメガネや鍵、預金通帳を置い た場所を忘れてしまい、うろうろと探しまわる人。 普通名詞なら昔もなく記憶できるのに、 人の名前や固有名詞がどうしても覚えられない人。 あなたから聞いた話を、さも自分のアイディ アのように語る人。大切な約束をつい忘れて、 すっぽかしてしまう人。過去の出来事 を都合良く変えて覚えている人。そして、失恋や仕事の失敗 など、過去の嫌な出来事の記憶を、いつまでも忘れられない人……。じつは、   これらは私たちのだれにでも起こりうる記憶のエラーなのである。(後略)

  色のない島へ  オリバーサックス著  大庭紀雄監訳早川書房
 陸地から遠く離れた「島」という環境ゆえに、  特異な風土病が今なお残るミクロネシアの島々。  ここには、奇妙な病気とともに何世代も生き  てきた人々の驚くべき暮らしぶりがあった。  ピンゲラップ島は世界で唯一、先天性全色  盲の患者が集団で暮らす場所である。この  非常に稀な遺伝病の患者は、生まれつき色  彩感覚がなく、自と黒だけの視覚世界に生  きている。だが彼らは、聴覚や記憶力を素  晴らしく発達させ、美しい自然の中で心豊  かな生活を営んでいる。  グアム島には、四肢が麻痺したり痴呆となり、  急速に死にいたる原因不明の神経病が多  発している。しかし、この病気があるためか、  島の人々は互いに助け合うのをごく当然の  ことと考えながら暮らしているのだ。  世界的に著名な脳神経科医サックス博士が、  さまざまな神経症状を示すミクロネシアの人々  の日常生活を心暖まる筆致で描くとともに、  彼らをとりまく家族や社会にまで視野を広げ、  病気と人間との関係を鮮やかに浮き彫りに  する感動の医学エッセイ。

レナードの朝  早川書房 NF237 オリヴァーサックス著 春日井晶子訳
 脳炎後遺症のために自分の意志で動くことも話すこともできず、 凍りついたように同じ姿勢を取り続ける患者たち−破壊的な病に 自由を奪われた彼らだったが、奇蹟の新薬によって驚異の 「目覚め」を経験し、じょじょに人間的な生活を取り戻していく。だが、この薬には知られざる「副作用」があった……20人の患者それぞれの奇妙な症状と人生を深い洞察力で描き、人間の尊厳に迫るサックス博士の代表作、新訳決定版で登場。

サックス博士の片頭痛大全 早川書房 NF243 オリヴァーサックス著 春日井晶子、大庭紀雄訳
片頭痛は頭が痛くなるだけの病気ではありません。お腹が痛い、吐き気がする、あなたも心当たりがありませんか−−−人類を悩ませる病の本質が、豊富な症例、多数の口絵と図、鋭い観察眼によって明らかになる。『レナードの朝』などの医学エッセイで知られるサックス博士が、症状の類型から効果的な薬物・治療法まで幅広く考察する。「目のなかに星が見える」こともある不可思議な片頭痛の世界を平易に科学した不朽の名著。

先天色覚異常の方のための 色の確認表
著者:中村かおる 岡島 修 , 発行:アゼリア出版, 発売:医学書院

先天色覚異常の方は,色の判別に迷ったり,自分でも気づかないうちにミスを したりすることがあります。この「先天色覚異常の方のための色の確認表」は,診断するための 検査表ではなく、 間違えやすい色の組み合わせを考慮して,みなさんが実際にどのような色が 見分けにくいかを確認し,実生活で色を誤らないよう備えるために作られて います。
全国医書専門店や大型書店医学書コーナー,医学書院ホームページに て購入できます。

眼科学の歴史  過去擦り返ると知識の蓄積と技術の革新と情報の流通は日進月歩そのものでした. 怒涛のように押し寄せる潮流への対応に明け暮れ過去をじっくり 顧みる余裕か乏しい昨今ですが、発見や発明や革新や変革は一朝一夕に成ったものではありません. 先人たちの並々ならぬ努力の跡をかみしめなから日々 の診療に取り組みたいものです.(大庭紀雄 序 より)。Duane症候群, Adi症候群,マリオット盲点などの原著が記載されている。一読したい。( 眼科プラクティス ,2003 文光堂)

最近の文献

交通事故関連 

注視点計測による対話負荷の定量化に関する研究 (*注 携帯電話が大脳に与える負荷 は極めて大きいことの決定的な論文)
     浅野 陽一(財団法人日本自動車研究所) 内田 信行(財団法人日本自動車研究所) 橋本 健志郎 (社団法人臼太自動轟工業会)
Study on the quantification of the mental work load by the gaze points measurement Change of the gaze points gap between left and right eyes were measured in conversing with mental work load. Twelve subjects participated in a tracking task as a main task installed in a mock-up driving simulater. A conversation task and a vocalization task were appended simultaneously with the main task. Reaction times to target LEDs placed in front of subjects were measured to confirm the level of mental work load additionally in that session. The result of experiment, gaze points gap and reaction time increased while doing conversation task. It was suggested that the measurement of gaze points gap was capable of evaluating the quantification of the mental work load.
 運転中の会話や考え事など,必ずしもドライバの脇見などの 晃線移動を伴わない思考的負荷が運転行動に影響を与える ことが知られているi).また,思考的負荷による視線行動への 影響について,飯田2)らは高速道路直線部を走行中の視線 守動をアイカメラによって計測した.その結果,思考的負荷が 加わると, @短い眼球停留時間の頻度が高まる, A正面方向 \視線が固定し,視野周辺への視線行動が減少することを報 告している.しかし,いわゆる「意識の脇見」といった現象のよう こ,視線が視対象に向けられているにもかかわらず,十分な視 乾的情報を得られない状況も考えられる.
ところで,思考的負荷と人間の注視行動との関係について, 〜I田S)は視線行動だけではなく,両眼のコントロールに乱れが 生じることを確認している.両眼の注視点にずれが生じた場合. 窯点ずれなどにより明視が失われ,視対象の認識に影響を与 iる可能性が予想される.つまり,目の向きが視対象に向いて rlるにもかかわらず,両眼の注視点のずれ(以下,注視点ギャ /プ)が生じるために十分な視覚的情報が得られない可能性を 示唆している.ただし,この研究例は室内にて一点凝視を主夕 スクとし実施されたものであり,自動車運転時に同様の現象の 再現性については言及していない.
本研究では,視線移動を伴わない場合の思考的負荷の定 量化を目的とし,自動車運転時の思考的負荷による注視点ギ アップへの影響を測定し,検討する.このため,先行車への追 従状況を模擬した簡易シミュレータ運転時に対話課題を熱し, 対話による思考的負荷と注視点ギャップの関係を調べた.
自動車技術会 2002年秋季大会前刷集

レーザー関連 

チタンサファイアレーザー網膜障害に対する,補償光学眼底カメラおよび フーリエドメイン光干渉断層計を用いたイメージング
北口善之1',不二門尚1),日下俊次2),山口達夫3),三橋俊文3),田野保雄2)
(1)大阪大学医学部感覚機能形成学教室, 2)大阪大学医学部眼科学教室, 3)株式会社トプコン)
Imaging of Titamium : Sapphire Laser Retinal Injury by Adaptive Optics Fundus Imaging and Fourier-domain Optical Coherence Tomography Am J Ophthalmol 148 : 97-104, 2009.
レーザー網膜外傷後,検眼鏡的に正常にもかかわらず視機能障害を自覚する症例があるがその詳細は明らかで ない.我々は, 2μmと優れた水平解像度をもつ補償光学眼底カメラ(AO),垂直解像度に優れたフーリエドメイ ン光干渉断層計(FD-OCT)を用いて視細胞外節の乱れを明らかにしたので報告する. 症例はチタンサファイアレーザーの実験中に受傷した2例2眼.いずれも検眼鏡的にほぼ正常であったが視力 0.3, 0.4と視力低下を認めた. FD-OCTで視細胞外節に相当する層に400μmの低反射を認め, AOではFDOCT 所見と一致する大きさで地図状の低反射域を認めた.光を直接見た自覚のなかった1例ではAOでの低反 射域は幅30μm程度の直線が多数集合した形態を呈しており,作業中に弱い反射光を何度も見たことが機転と 推測された.
以上, FD-OCTにより従来検眼鏡で検出できなかった視細胞外節の乱れを検出でき, AOでその広がりを評価 することが可能であった.レーザー網膜障害においてその受傷機転推測,回後退程観察に有用と思われる. 日眼会誌113巻12号より
 近年、眼底、網膜の計測技術が進歩し、従来は安全と考えられたレーザー光量でも網膜に障害が起こることが分かり、Sliney氏等はMPEの変更が必要だと考えている。

Retinal injury thresholds for blue wavelength lasers
Lund DJ, Stuck BE, Edsall P
Health Phys. 2006 May;90(5):477-84.

Optical Coherence Tomographic Evaluation of a Surgically Treated Traumatic Macular Hole Secondai to Nd:YAG Laser Injury
Am J Ophthalmol 2003:135:537-539
R Sou S Kusaka M Ohji F Gomi Y Ikuno Y Tano
硝子体手術が有効であった初めての事故症例。 0.6が1.0に回復。

Assessment of Alleged Retinal Laser Injuries
Martin A. Mainster Bruce E. StuckJeremiah Brown
Arch Ophthalmol 2004;122:1210-1217
レーザー事故例と取り扱い

WHAT IS THE MEANING OF THRESHOLD IN LASER INJURY EXPERIMENTS? IMPLICATIONS FOR HUMAN EXPOSURE LIMITS
David H. Sliney,* John Mellerio,1" Veit-Peter Gabel,* and Karl Schulmeister
Abstract-The derivations of human exposure limits for laser radiation rely heavily upon experimental ocular injury studies. The limits are derived by committees of ophthalmic experts through a review of all available threshold data and an understanding of mechanisms of laser/tissue interaction. A major point of discussion in this derivation process relates to the level of uncertainty of the threshold of injury. An indica- tion of the level of uncertainty relates to the slope of the transformed dose-response curve, or the "probit plot" of the data. The most cited point on the probit plot is the exposure that represents a 50% probability of injury: the ED-50. This value is frequently referred to as the "threshold," even though some experimental damage points exist below this "threshold." An analysis of any number of example data sets reveals that the slope in most experiments cannot be explained by biolog- ical variation alone. The optical, thermophysical, and biologi- cal factors influencing the probit plot are critically analyzed to provide guidance for deriving exposure limits. By theoretically modeling an experiment, small errors in focus are shown to produce a substantial change in the ED-50 and the slope of the probit plot.
Health Phys. 82(3):335-347; 2002
Key words: lasers; radiation damage; radiation, nonionizing; safety standards

Laser Pointer and Laser Safety Standard, Tetsuma Ozawa( Yokohama Teishin Hospital) Abstract
 Background : In recent years, cheap laser pointers have been used as toys for children. The safety of laser pointers has become a public issue.
  Cases : Many cases of visual disturbance without  retinal symptoms were reported, and those might be  of a psyehogenic nature or due to afterimage effects. However, four cases of macular retinal pigment epithelial disturbances due to radiation of a laser pointer beam were reported. One patient was  affected in both eyes because of alternate laser beam  radiation to both eyes. The exposure time to the laser beam exceeded 10 seconds. All cases except one  were young patients. For the safety, it is important  that handheld laser pointers be kept away from  children. Toy type laser pointers should be treated  as Class I laser products according to the Consumer  Affairs Council, Ministry of Economy, Trade, and Industry. (J Jpn OphthalmoI Soc 105 : 653-658,2001)
 Key words : Laser pointer, Laser maculopathy, Laser safety standard

. Laser pointers:not be taken lightly.
Israeli,D
British Journal of Ophthalmol.845:555-556,2000
イスラエル。16才 男 両眼に交互に 20秒間 1mの距離よりレーザーポインターの光を照射された (670nm 5mW laser diode)。2日間 赤い中心暗点を自覚。3日目には視力,視野とも正常。しかし両眼とも中心小窩のすぐそばに螢光眼底撮影にて過螢光を示した。この状態は8ヶ月続いた。

Mcghee,C.N.J. et al Laser pointers can cause permanent retinal injury if used inappropriately Br J Ophthalmol.84:229-231,2000
Sethi CS,Grey RHB,Hart CD Laser pointers revisited:a survey of 14patients attending casualty at the Bristol eye hospital Br J Ophtahlmol83:1164-1167,1999.
Robertson DM et al Laser pointers and the human eye Arch Ophthalmol118:1686-1691,2000.
Mainster MA et al But is it really light damage? Ophthalmology104:179-180,1997.
Mainster MA & Kan KC Blinded by the light-NOT! Arch Ophthalmol117:1547-1548,1999
Luttrull JK & Hallisey J Laser pointer-induced macular injury Am J Ophthalmol.127:95-96,1999.
Optical coherence tomography findings in early solar retinopathy.
Bichmann,M. Ehrt,O. et al
British Journal of Ophthalmol.84:547-548,2000
ドイツでの日蝕観察時に起きた太陽光による網膜症の2例。OCT では浮腫を認めず

Pilot study on erbium laser phacoemulsification.
Hoh,H. & Fischer,E
Ophthalmology.107:1053-1062,2000
中等度まではe-laser で手術可能

Laser-induced Eye Injuries in Japan

RYOUHEI KOIDET,YUKIKO KORA, MAKI SHIKANO,TAMOTSU SEKI, MAKOTO INATOMl and TETSUMA OZAWA

Department of Ophthalmology, Showa University School of Medicine, 1-5-8 Hatanodai, Tokyo, Japan

We studied 29 cases (30 eyes) to know the common characteristics and circumstances of laser instrument-related industrial accidents. The most common occupation of those injured was research worker (15 cases). The most common place of accidents was the laboratory room, accounting for 24 cases and also the use of YAG laser were most common in Japan (l8 cases). The cases with the injuries on the fovea had poor visual acuity. None of the injured individuals wore protective eyewear at the time of injury. The present safety requirements in the laboratory should change in the near future.

Keywords: Industrial laser accidents; Eye; Protective eyewear; Laser safety

Lasers in the Life Sciences, Vo1. 9, pp. 69-80,2000

日本での産業用レーザによる傷害例 (学会抄録,論文) 29例 (1996年までのもの)を集め諸外国との比較等の考察を加えたものである。

Laser Pointer Maculopathy
Ehud Zamir, MD, lgor Keiserman, MD, and ltay Chowers, MD
Amer J Ophthalmol 127 (6) : 728-729, 1999
レーザーポインター照射によりにより網膜に器質的な傷害が確認された初めての症例である。 10秒間見つめていた。 視力0.5. で 後に1.0 まで回復。

神経眼科関連

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melanopsin/網膜第3光受容器ipRGC
大庭紀雄
(眼科学用語ノート18. 日眼会誌112巻9号831-836、2008)
既成の概念や認識の枠組みを変える、一種のパラダ イムシフトが視覚科学や神経眼科学や時間生物学の領 域で起こっている。 melanopsinという新しい視物質 の同定と第3の網膜光受容器の発見である。このこと が我が国に伝えられたのは2006年11月に東京で開催 された第16回国際神経眼科学会(International Neur0- 0phthalmology Society)において、次いで2007年秋に 浜松で開催された国際瞳孔学会(The 27th Pupil Colloquium) においてであった。(中略)
melanopsin/ipRGCs 網膜神経節細胞の一部の細胞は, melanopsinを発 現してphototransduction機能をもつことからintrinsically photosensitive retinal ganglion cells (ipRGCs)と 呼ばれる. melanopsinを発現しないで光感受性のな い網膜神経節細胞(RGCs)と区別する。
網膜から視神経へ出力される情報は,外側膝状体を 経由して後頭葉視覚領に達する視覚情報(image forming photoreception, visual information)と,外側膝状 体の手前で分岐して視床下部に向かう非視覚情報 (non-image forming photoreception, non-visual infermation) とがあって体内時計の設定,概日リズムの調 節,瞳孔対光反応などが生まれる.こうしたnon-visual responseの出発点がどこにあるかはpuzzleであ りenigmaであったが, ipRGCsに他ならないことが 判明したのである。(後略)
各方面から注目されている網膜神経節細胞層の新発見の視物質melanopsin、網膜光受容器、ipRGCについての解説で、さらに非視覚系応答、生体時計、瞳孔対光反応など関連事項について平易にのべられている。ぜひ一読してください。神経眼科誌25巻2号は瞳孔が特集で Lucas教授、Kawasaki教授のメラノプシン関連論文の和訳が掲載されているので、こちらも参照されたし。下のEPGの図はKawasaki教授の論文に掲載されたものである。
下右図は2008年浜松で開催された国際瞳孔学会の抄録集だが、1986年同じく浜松で開催された同学会の抄録も再掲載されて、晝馬輝夫氏(浜松ホトニクス社長)の時代を先取りした特別講演も記録されている。


眼精疲労を有する若年visual display terminal (VDT)作業者に対する 屈折適正矯正による調節反応と自発症状の変化について
小手川泰枝,原  直人,大野 晃司,有本 あこ,向野 和雄
神奈川歯科大学附属横浜クリニック眼科
(日眼会誌112 : 376-381, 2008)
目 的:若年visual display terminal(VDT)従事者 由来の眼精疲労に対し,屈折適正矯正を行い,自発的に 眼症状の発生率,他覚的に調節反応の変化を目安に屈折 適正矯正の有用性を検討した.
方 法:20代のVDT従事者。(中略)適正矯正眼鏡またはソフトコンタクトレ ンズを6か月間装用させた.その後,再び調節機能測 定,自記式質問調査を行い装用前のデータと比較した。
結 果:15名の低矯正について,眼の症状(頭痛,眼 の痛み,眼の疲れなど)発生率は有意に減少し(p< 0.005),ステップ制御調節応答波形による利得(%),調 節・弛緩相での最高速度(D/sec),到着時間(sec)は有 意な改善がみられた(p<0.05). 3名の過矯正について も低矯正と同様,眼の症状発生率の減少ならびに利得, 調節・弛緩相での最高速度,到達時間は改善する傾向が みられた.
結 論:屈折適正矯正は低矯正の若年vDT作業者の 眼精疲労に対して有用性のあることが示唆された.
VDT作業者の眼鏡が低矯正であっても何ら不都合は無いように思えるが、そうではない。若年者では完全矯正が必要とのこと、常識を破る結果である。 第2部である日眼学会2008抄録の偏頭痛での屈折矯正も併せて臨床上注目すべき論文である。


Childhood Mvasthenia Gravis in Japan-Clinical Analysis of 184 Cases at Segawa Neurological Clinic for Children for 30 Years
Yoshiko Nomura, Kei Hachimori, Yuri Nagao, Masami Segawa, Kazue Kimura, and Masaya Seaawa
Neuro-Ophthalmology, 3 1 :201 -205, 2007
2006年に国際神経眼科学会Tokyoで発表されたものの原著で、何故、日本では小児のMGが多いのか、 小児のMGの予後は成人に較べてどうなのかなど、長年の疑問に関連した小児のMGに関する集大成である。 学会報告の項(国際神経眼科学会)も参照されたし。


Presence of the Abducens Nerve According to the Type of Duane's Retraction Syndrome
Jae Hyoung Kim Jeong-Min Hwang
Ophthalmology 2005:112:109-113
Duane症候群での外転神経の欠如,動眼神経の発育不全の存在を示した決定的論文
Variability of the Relative Afferent Pupillary Defect

AKI KAWASAKI, M.D., PAULA MOORE,AND RANDY H. KARDON′ M.D.
Ameri J Ophthalmology 1995:120:622-633
電子瞳孔計(EPG)で測定するとRelative Afferent Pupillary Defect(RAPD)の判定の 精度、定量性ともに飛躍的に向上する

Familial voluntary nystagmus
Neppert B, Rambold H
Strabismus. 2006 Jun;14(2):115-9
1例は search coil を用いて、両眼の20Hz前後の速い眼球運動を精度よく記録している貴重な論文.

Adduction on attempted abduction: the opposite of synergistic divergence 
Kim JH, Hwang JM.   Arch Ophthalmol. 2006 Jun;124(6):918-20
bds congenital fibrosis of EOM の一例 上下左右各方向注視で内下転する。 
MRIで 両外転神経欠如 両動眼神経異常(細い) が認められた。


後藤 晋・久保田伸枝・丸尾 敏夫
Monocular Fibrods Syndromeと思われる症例について
日眼88:499-507 1974
かなり昔の発表であるが、Congenital Fibrosis Syndrome 関連の 論文は数多くあるなかで、EMGで外眼筋の異常神経支配 を確認した唯一の論文であろう。
 
Michael C. Brodsky, MD
Dissociated Vertical Divergence A Righting Reflex Gone Wrong
Arch Ophthalmol. 1999;1l7:1216-1222
Michael C. Brodsky Sean P. Donahue
Primary Oblique Muscle Overaction The Brain Throws a Wild Pitch
ARCH OPHTHALMOL 119. 1307-1314 2001
Michael C. Brodsky Ronald J. Tusa
Latent Nystagmus Vestibular Nystagmus With a Twist
Arch Ophthalmol 2004 122 202-209
上記 Brodsky の論文は下斜筋過動やDVDなどの奇異な眼球運動の神経学的考察の秀作。

C Souza-Dias A B Scott A-H Wang
Progressive restrictive strabismus acquired in infancy
Br J Ophthalmol 2005;89:986-987
筋炎後と思はれる乳児の後天性斜視

Jae Hyoung Kim Jeong-Min Hwang
Presence of the Abducens Nerve According to the Type of Duane's Retraction Syndrome
Ophthalmology 2005: 112: 109-113
DuaneT型では外転神経が欠損している。V型では動眼神経にも異常。 眼球後退症の病態についての重要、秀逸な論文。

   MRIにおけるDuane症候群の外転神経欠損像
      鎌田 芳夫,田中雄一郎,渡辺朗,畑雄一
MRI of Duane's Retraction Syndrome; Absence of the Abducens Nerve   Yoshio Kamada, Yu-ichiro Tanaka, Akira Watanabe , Yu-ichi Hata t (Neuro-ophthalmol Jpn 20: 174 -177, 2003)
両側性の外転神経麻痺と水平注視麻痺を呈した小児MSの一例  伊藤美沙絵 新井田孝裕,向野和雄,永野幸 清水公也  Bilateral Abducens Nerve Palsy and Bilateral Horizontal Gaze Palsy in a  Child Case with Multiple Sclerosis  (Neuro-ophthalmol Jpn 20: 178 - 185, 2003)

  眼球運動障害,幻視,失調を主徴とした橋梗塞の2症例
     伊藤由里,野倉一也,尾関俊彦,大澤宏之,山本\子
Pontine lnfarction with Ocular Motor Disturbance, Visual Hallucinatior and Ataxia- A Report of Two Cases (Neuro-ophthalmol Jpn 20: 208 -213, 2003)



眼科誌のImpact Factor


各眼科誌の journal impact factor の推移
1990 年代前半に journal impact factor (JIF) が0.5 以下であったジャーナルの2007 年までの推移を示す.(大庭紀雄 眼科ノート日眼111 2007) 参考までに当時から1.0 に近かったEye, Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol, Br J Ophthalmol を参考に添えた。
impact factorは掲載された論文が、他の論文にどれだけ引用されたか、引用された回数の多い論文ほど価値が高いと判断する。計算式を作り 数値(impact factor)が大きいほどいい学術誌となる。各誌関係者は如何にして impact factorを大きくするか、腐心することとなる。この図は大庭紀雄氏が独自の計算式で近年の眼科各誌のimpact factorを計算したもので、日本の英文眼科誌 Jpn J Ophthalが、近年大きく上昇している。


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