あなたはこの話が好きになる

作 山下泰昌


とある国があって

その国では王女様は二十三才になったら

石像にならなければならない

むかしむかしからのいいつたえ

それを守らなければ国が滅ぶという

だけど十三番目の王女さまは

怖くなって逃げ出してしまって

そのせいで国は滅んでしまったとさ

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あなたはこの話が好きになる

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派手な格好のおばあさん

いつも街をうろついている

あっちへうろうろ

こっちへうろうろ

いつも子猫をさがしている

派手な格好のおばあさん

とっても子猫が大好き

とっても子猫を食べるのが大好き

いつも街をうろついている

あっちへうろうろ

こっちへうろうろ

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あなたはこの話が好きになる

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あるところに

人の話を食べる悪魔がいたとさ

その悪魔は

食べる話がなくなると

その人間を殺してしまうんだって

そこで悪魔に捕まったとある小説家は

休む間もなく話を作り続けたとさ

でも結局年を取って死んでしまったとさ

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あなたはこの話が好きになる

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少女を漬けた酒があるという

生きたままの少女を漬けた酒があるという

禁断の甘露であるその酒を

宛てもなく求め続ける男がいる

その酒を作り続ける女がいる

でも彼女は今、若い男にご執心

おかしいよね

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あなたはこの話が好きになる

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虹を待っている男がいる

虹を渡って旅する男がいる

今日も坂の上で空を見上げている

大空にかかる虹を待っている

だけど雨は降らず

そして虹も出ない

虹を待っている男は

希望を持って空を見上げている

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あなたはこの話が好きになる

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希望の光を灯す村がある

洞窟の奥にそれはある

その光を絶やすと

天変地異が起こるという

偶然それを見つけた僕は

うっかりそれを消しちゃった

えらいこっちゃ

えらいこっちゃ

天変地異は確かに起こった、よね?

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あなたはこの話が好きになる

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トキが二百六十八羽みつかった

絶滅寸前のトキが二百六十八羽みつかった

日本中が大喜び

でも、あやしい男、二人組が

全部やきとりにして食べちゃった

おいしかったね

最後のトキはおいしかったね

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あなたはこの話が好きになる

僕の話が好きになる

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核戦争が結局起きて

生き残った最後の男

彼は死ぬ間際に

汚染された大地と

妖精と一面の花畑を見たという

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あなたはこの話が好きになる

僕の話が好きになる

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芸術家のこびとたち

嵐のあとにはせっせせっせと庭づくり

ここには小石をおいて

ここには星の花を植えよう

さあ出来上がり

あなたの足下にもありませんか

こびとたちの傑作が

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あなたはこの話が好きになる

僕の話が好きになる

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エレベータの天井に隠れて

エレベーターの中を覗く男

彼はいろいろな人を見る

誰もいないのをいいことに

ポーズを取る女

ギターを弾く真似をする若者

一瞬でズボンをずりさげ、また履く男

彼はいろいろな人を見た

だけどそれも今日で終わり

だって見つかっちゃったから

エレベータが故障して

止まって困ったところを

助けてもらったから

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あなたはこの話が好きになる

僕の話が好きになる

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そこの世界は

魔法を使うのが当たり前の世界

精霊使い

紋章使い

言霊使い

いろいろな魔法を使う人がいる

だけども女子高生の彼女は

自分になんの取り柄もないので悩んでいる

一芸に秀でていないと悩んでいる

それだって最高の取り柄だっていうのにね

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あなたはこの話が好きになる

僕の話が好きになる

好きで好きでたまらなくなる

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橋をつくった老人がいた

だが老人は橋を造るときミスをした

そのことを気に病んだ老人は

毎日、その橋を何往復もすることにした

償いのために

報いを受けるために

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あなたはこの話が好きになる

僕の話が好きになる

好きで好きでたまらなくなる

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とある話を好きになった人がいた

好きで好きで

その話がなくては生きていけなくなってしまった

とある話というのは

この話のことで

その話を好きになった人というのは

もちろん、あなたのこと

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この話が好きになる

この話が好きになる


あとがき
……であなたはこの話が好きになっていませんよね。

今(書いてから6年後)読み返すとかなり押しつけがましい話ですね。自分で見ても。

すみません。この話が好きにならなくても良いっす。

サブリミナル効果を小説に持ち込めないか? と考えて書いた小説(?)です。

詩の手法を取り入れた実験的な話なので気に入ってはいるんですが、

サブミナル効果という点で考えたら大失敗していますね。

うーん。考え直さなくちゃ。

ところで、この中で語られている話はいくつか小説になっています。

2つ目の話は『となりのみいちゃん』、4つ目は『美酒』(未公開)、7つ目は『268羽のトキ』(ちょっと

話の結末は異なりますが)、8つ目が『地球よ』(未公開)、12番目が『ローカル線』(未公開)です。

また、この中には、いずれ小説にしようと思って暖め続けている話もあるんですよ。

一番目、三番目がそれです。それぞれ『13番目の石像』、『ストーリー・テラー』という題名の

話になる予定です。ま、どうでもいいことですけど。

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