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アサギマダラ・ニュース No.46

            

アサギマダラ大移動研究会

        〒890 鹿児島市明和4−5−32 福田晴夫方
1997年2月22日発行
TEL&FAX.099-***-****, E-mail:tefutefu@po.synapse.or.jp



台湾の人達への手紙
青斑蝶のmarkjng調査をやりましょう

 前触れもなくこのようなものをお送りする失礼をお許しください。実はこれは蝶の移動についての、小さな国際協力のお願いなのです。
 すでにこ承知かと思いますが、台湾から日本へは毎年、多くの蝶が気流に乗って飛来します。私たちはこれらを迷蝶と呼んでいますが、彼等の斑紋や気流の検討から出発地の多くは台湾と推定されます。これをmarking調査によって確認出来たらと思うのです。その手始めにやりたいのが標記の蝶です。
 日本にも定着している青斑蝶(アサギマダラ Palantica sita)は、多くの迷蝶がいわば片道キップの旅行者であるのに対し、春の北上、秋の南下と往復の長距離移動をしています。このことは1980年から始めているmarking調査によって明らかになりましたが、台湾の方々のご協力がなければ解決できない問題が山積していることにも気付きました。もちろん台湾での若干の予備調査もやってみましたが、まだほとんと何も分かっていません。やはりそこに住み着いている人でなければ、成果は挙げられないようです。
 実は1995年夏、台湾大学の朱耀沂教授(台湾昆虫学会会長)が鹿児島にお見えになった時この件をお伺いしましたところ、ご帰国後、同大学の楊平世教授の論文と共に「いろいろ厳しい面はあるが、不可能ではないので、もう少し具体約な案、方法を検討して知らせて欲しい」という旨の有難いお便りをいただきました。しかるに、その後私の方がもたもたして、ついそのままになっております。申し訳ない次第です。また日本の研究者からも台湾の知人、研究者を何人かご紹介いただきましたが、これも具体策が浮かばずそのまま今日に至りました。
 そこで思いついたのがこの連絡紙を使うということです。これを出来るだけ多くの台湾の方々にお送りしましよう。ただ、日本文で甚だ恐縮です。もしお気が向かれましたら、どなたかに台湾語に翻訳してもらってください。私は今それらの方々のご厚意に甘える他はありません。

判明した事実と疑問点

 本種は4〜6月頃の南西風に乗って南から北へ移動し、6〜8月高地で生まれた新世代が9〜11月には北寄りの風を利用して南下、そこで産卵して主に幼虫で越冬し春に新成虫が羽化というのが年間のサイクルです。これらの移動範囲は今のところ日本列島内に限られていますが、春の北上の出発地として、また、秋の南下の到着地として台湾が注目されます。
 筆者は1994年8月上旬に北部の海岸線(金山〜石門、陽明山)、同年12月上旬に東部海岸線(花蓮、瑞穂、大港口、光復)の予備調査をしてみましたが、それぞれ時期が遅すぎたようで、今後の調査へのヒントを少し得たに過ぎません。次のようなことはどうでしょうか。

マーキング調査の方法

 羽に油性のフェルトペンで記号や番号を書いて放すだけです。発見されやすいように左右の後翅を主にした方がよいでしよう。記号・番号には特にきまりはありませんが、再捕獲者がそれと気付くように「台」とか「台北」「TAIWAN」「TAI」などという文字を入れることを希望します。日本で使う記録用紙には「記号・番号、年月日、地名、性、汚損度、前翅長、生態など」の欄がありますが、要は最低限いつ、どこで、だれが放したかが分かればよいのです。
 春は北部あるいは東部で3〜4月の放蝶が良いと思います。低地の人里に野菜として植えてあるスイゼンジナ Gynura bicolor(菊科)の花が成虫の好物で多数集まりますから、学校の花壇などに植えて花を咲かせる方法も有望です。5〜8月には陽明山のような高地に上がるのではないでしようか? 台湾各地でmarkすれば島内での移動の実態もつかめましょう。なお、放蝶をされましたら、台湾内でどなたかが情報を集めていただくのが一番ですが、当会にもお知らせいただけば日本での注意を喚起します。

秋は日本からのmark虫を探して下さい。時期は10月〜11月です。

 場所は東海岸ならどこでも可能性が高く、案外内陸部にも入り込むかも知れません。大湾口の牧場への道はカッコウアザミ Ageratum conyzoides(菊科)の花が多くて有望でした。もちろん食草群落があれば最高です。
 さらにまた、日本では4〜6月に小青斑蝶(タイワンアサギマダラ P. melaneus)が青斑蝶にまじって発見されますし、多数の淡小紋青斑蝶(ウスコモンマダラ Tirumala limuniace)や少数の近縁種が飛来します。ですから、これらの蝶にもmarkされると思わぬ成果が挙がるでしよう。
 日本ではMarking調査に、蝶の研究者、愛好者だけでなく、一般のご婦人や子供たち、お年寄りなどの参加者が増えて、成果をあげています。放蝶するときは再捕獲が夢のような話という気もしますが、現実は夢ではありません。いや、夢であっても良いではありませんか。台湾で夢追人が少しでも増えることを願っています.

図は日本列島での移動記録(1981-1996年)。北上個体の記録がまだ少ない。



HARUO FUKUDA(Meiwa 4−5−32, Kagoshima, 980, JAPAN)



発行不定期、会費不要、投稿・情報歓迎。本紙の入手希望者は、封筒に80円切手を貼り、自分のアドレスを記入して送っておくこと。(切手だけでは困りますので、よろしく)



 このページは、「アサギマダラ大移動研究会」発行のアサギマダラ・ニュースの内容を、インターネット版として掲載したものです。ただし、プライバシー保護のため、投稿者(情報提供者)の住所等は省略表示してあります。
 このページは「アサギマダラ大移動研究会」の福田晴夫さんの全面的なご協力によって、作成したものです。この場を借りて、お礼申し上げます。

 アサギマダラの移動に興味をもたれた方は、是非、マーキング調査に御参加下さい。簡単なやり方を覚えれば、誰でも参加できます。マーキングの仕方は、近日中にこのホームページで紹介する予定です。
 なお、このページならびにアサギマダラに関するご質問、お問い合わせは 藤井 恒 または 福田晴夫さん までお願いします。


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