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アサギマダラ・ニュース No.53

            

アサギマダラ大移動研究会

        〒890-0024 鹿児島市明和4−5−32 福田晴夫方
1998年2月4日発行
TEL&FAX.099-***-****, E-mail:tefutefu@po.synapse.or.jp



1997年のアサギマダラ調査を振り返る


1 マーキング活動は各地でより活発に展開された。

 すでに定着、定例化している関東、東海、中部、近畿などのほか、長野県美ヶ原自然保護センターの橋本肇氏らが結成した「信州アサギマダラ研究会」の活躍はめざましかった。
また手薄といわれた四国の室戸岬では長崎志津男氏が540頭、九州でも長崎県外海町の伊藤雅男氏が777頭のマーキングを行った。奄美諸島の与論島でも竹夫妻らにより1000頭以上がマークされた。

2 再捕獲→確認→再放蝶という手法が取り入れられるようになった。

 再捕獲がそれほど珍しくなくなったせいか、番号などをメモしたり、写真で証拠として、そのまま、あるいは追加のマークをして再放蝶し、再再捕獲を期待する人が多くなった。そして、その成果が出た。

3 本種の個体数は例年なみ、ただ夏山に長く留まった?

 日本列島全体での状況はつかみにくいが、滋賀県比良山では、内田氏らによると、初見が5月6日で例年よりひと月早く、秋はエルニーニョで暑さが続いたせいか9月中旬まで山に多かったという。それでも個体数はマーク虫数(1人で2800頭!)からみると例年並みらしい。

4 春の北上マーク個体は確認されなかった。

 春から初夏に海を渡った長距離移動個体は、種子島からのもので1981、1988、1991年に合計4例しかない。この島からはその後も多くのマーク虫が放されており、南西諸島や九州からもかなりのマーク虫が飛び立っているはずである。
 本州でも捜す努力は続けられているが・・・・・・・・。

5 夏山の中距離・近距離移動例が増えた。

 中でも滋賀県の大津市蓬莱山8/18→8/21比良山→8/24蓬莱山というマーク虫の5km隔てたキャッチボールには驚かされた。内田孝・金田忍コンビの計画的な作業という。
 また、この両地では8月23−29日比良山→蓬莱山の移動6頭に対し、逆の蓬莱山→比良山は51頭の移動が確認され、内田氏らはこの時期に南向きの移動が始まったと推定している。
 このほか比良山→蓬莱山という中継確認地を経て和泉葛城山および鹿児島県喜界島へという長距離移動につながった。
 さらに近畿では、7月から8月にかけて、大和葛城山→38km→和佐又山の3例、大和葛城山→5km→金剛山の1例、金剛山→38km→和佐又山の1例が確認された。

6 秋の長距離移動例は、あまりの多さに別号(NO.54)に一覧表にした。

・本州では出発地として長野県松本市や武石村が注目を裕びた。
 ここからは岐阜県土岐市、愛知県常滑市および美浜町、鹿児島県喜界島(2例)、沖縄本島那覇市への移動があった。

・滋賀県比良山からは三重県、和歌山県、喜界島への定期便のほか、岡山市への移動ルートも確認された。

・中継地としての愛知県知多半島も、窪田宣和氏らの活躍で賑わったが、ここでは長距離移動のほか、秋の近距離移動も面白い。
 知多・渥美半島から、神島、三重県南島町、和歌山県日高町のルートもますます確かなものとなり、中西元男氏はこれを「東海〜南海道ハイウェイ」とよぶ。

・再捕獲の名所、喜界島では長野県(2例)、愛知県(1例)、滋賀県(1例)からの個体が再捕獲された。
 旭栄子さんのほか参加者も広がりを見せている。

・奄美諸島では沖永良部島から与論島への移動例が出た。

・沖縄本島では長野県松本市からと三重県からの移動個体が発見された。

・長崎県外海町から与那国島への移動はもっとも注目すべきもので、台湾まで後一息。

・ネガチブなデータであるが、沖縄県西表島では在住の長嶺邦雄氏によると、この秋わずかに2頭目撃されたのみで、移動コースからはずれているかもという。

7 パソコンの利用も活発になった。

 「アサギネットに参加しませんか?」(藤井恒氏ら)というパンフも配布された。
 松本市や大阪自然史博物館でも軌道に乗りそうで、今後の調査の切り札となろう。
 従来は地図によっておおよその直線距離が出されていた移動距離も、パソコンソフトによる再検討が進行中である。地名の緯度と経度で数値が出るという。

8 マスコミの貢献度も大きかった。

 再捕獲例が増えてニュース性が低くなったものの、だれもが参加できる科学的調査であるし、感動は人を動かすもので、季節的な話題としても、大きく取り上げられた。
 とくに、信州や知多半島の人達の熱意にはマスコミも協力を惜しまなかった。

9 国外の人達への呼びかけが始まった。

 本紙50号の英文紙が高崎浩幸氏のご協力で発刊でき、中国語版も藤井恒氏のお手配で完成が近い。
 台湾の人達のご協力で見通しは明るい。すでに、若干のマーク虫が放された。

10 参加者、理解者の層が広がりをみせた。

 「アサギマダラ帰りゆきたる沖縄を名護を思いて新年迎う」(飯田市・熊谷茂雄)。
                 1月26日の朝日俳壇から。


アサギマダラの再捕獲例3題


1 滋賀県→岡山県 (HU 635) ♂:鮮度N。前翅長59mm。西南に約160km移動。

    放蝶:1997年8月3日 (AM 9:59) 晴:22℃ 内田 孝
    滋賀県比良山(Pコース南。alt.1090m)、ヨツバヒヨドリ吸蜜中。
    再捕獲:9月29日 (PM3時頃) 岡山市西大寺 芥子山 山頂付近  藤田一郎     7頭採集した内の1頭にこのマークがあった。
    再捕獲のデータは岡山昆虫談話会の三宅誠治氏から連絡(12/5)があったもので、放蝶のデータは「アサギマダラ情報」(NO.197)より判明した。

2 三重県→沖縄本島 (MN163 10/11なんとう) 性は(?)

    放蝶:10月11日 三重県南島町藤板峠  中西元男
    再捕獲:11月30日 (PM4時頃)沖縄本島本部町嘉津宇岳  与那原正勝
    この記録については長嶺邦雄・中西元男・藤井恒氏にお世話になった。

3 沖永良部島→与論島   (OKE 020)(♀) *マークのみメモして放蝶     放蝶:10月25日 鹿児島県沖永良部島大山   中峯浩司・敦子
    再捕獲:10月28日 鹿児島県与論島ピアヌパンタ  竹下百合子
    この記録は竹下百合子、田中洋氏にご教示いただいた。

 以上、発表を一任されたので、遅くなったが関係者のご好意に感謝しつつここに報告する。

MEMO:

 地名の確認には高速道路公団の「道路マップ」が有効であると、大阪の大島新一郎氏から提供していただいた。納得!

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 このページは、「アサギマダラ大移動研究会」発行のアサギマダラ・ニュースの内容を、インターネット版として掲載したものです。ただし、プライバシー保護のため、投稿者(情報提供者)の住所等は省略表示してあります。
 このページは「アサギマダラ大移動研究会」の福田晴夫さんの全面的なご協力によって、作成したものです。この場を借りて、お礼申し上げます。

 アサギマダラの移動に興味をもたれた方は、是非、マーキング調査に御参加下さい。簡単なやり方を覚えれば、誰でも参加できます。マーキングの仕方は、ここを見てね。

 なお、このページならびにアサギマダラに関するご質問、お問い合わせは 藤井 恒 または 福田晴夫さん までお願いします。

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